2010年 05月 02日
「家族の肖像」 |
1974年/イタリア、フランス
監督/ルキーノ・ヴィスコンティ
出演/バート・ランカスター
ヘルムート・バーガー
血栓症に倒れたヴィスコンティが2年ぶりに復帰した作品。バート・ランカスターやヘルムート・バーガーなど、気心の知れた俳優たちが出演しています。
ローマのアパルトマンに住む初老の教授(バート・ランカスター)。孤独だが平穏な生活を送っていた。そんなある日、中年のブルジョワ女性ビアンカ(シルヴァーナ・マンガーノ)が上の階を貸してほしいと言ってくる。一旦は断る教授だが、結局は貸すことになる。表向きは娘リエッタ(クラウディア・マルサーニ)と彼女の婚約者ステファーノ(ステファーノ・パトリーツィ)のための部屋ということだったが、本当は愛人コンラッド(ヘルムート・バーガー)を住まわせるためだった。最初は粗野な振る舞いのコンラッドを嫌った教授だったが、彼に教養があることがわかり、彼に好意を抱くようになる。そして、教授にとって彼らは家族のような存在になりつつあったのだが・・・というストーリー。
全編セット内での撮影だけれど、さすがはヴィスコンティ。細部までのこだわりが感じられます。重厚かつ豪華。部屋ひとつ見るだけで、教授がどんな人なのか感じられます。落ち着いた装飾、壁にかかる18世紀の家族の肖像画。孤独な老人は、家族を持たない代わりに、家族の肖像画を好んで収集した。そこに安らぎを見出すように。
本当に孤独が好きな人などいない。特に老いればなおさら。しかし、教授は妻に裏切られ、離婚した過去があり、もうこれ以上心に傷を負わないために、人間となるべく関わりを持たぬようになった・・・と思うのです。そんな彼の領域に、若い彼らはズカズカと上がり込んだ。でもそれは、教授にとっては必要なことだったのかもしれません。たとえ一時でも、若い彼らと食事をして教授は楽しそうだったし、コンラッドと知識を交えた会話をする時は、充実していたに違いないのです。彼らこそ、教授が求めていた”家族”だと思うから。
裕福な生まれではないコンラッドが、ビアンカのヒモにならざるを得なかった皮肉。知的な彼にとって、それは苦痛だったかもしれない。教授と話している時の彼は穏やかで、2人の間には特別な雰囲気が流れていた。そう。まるで本物の父と子のような・・・飾らない彼がそこにいた。
教授を演じたのは「山猫」のバート・ランカスター。私は若い時の彼よりも年を取ってからの方が断然好きです。特に、ヴィスコンティ作品でその重厚な魅力は如何なく発揮されてます。
そして、コンラッド役のヘルムート・バーガー。この頃の彼は本当に美しい。どんな女優よりも美しく撮られていて、ヴィスコンティの彼に対する愛を感じました。
あと、特別出演ながら印象を残す2人の女優。教授の回想シーンに出てくる母親役のドミニク・サンダと妻役のクラウディア・カルディナーレ。こんなチョイ役でもこれ程の女優たちが出演しているところに、ヴィスコンティ監督の凄さが垣間見えます。
人間の孤独とは何か、家族とは何かを深く考えさせてくれる傑作。この作品を観て思ったのだけれど、今、これほどまでの作品を撮れる監督がいるでしょうか。時代の流れを読み、人間の在り方を問い、世代間の違いを作品に刻みつけた。私たちは作品を観て、いろいろ考える。作品を観てこんなに様々なことを考えるのは、やはり、ヴィスコンティが描きたかったことを読み取りたいから。そうすることに価値のある作品・監督だと思うのです。こういう監督は本当にもう少なくなりました。映画ファンとして、それが残念でなりません。
ところで、この作品は英語だったのですが、イタリア語で観たかったですね。予告編はイタリア語だったのに・・・。やはりヴィスコンティはイタリア語で観たいものです。
(DVD)
監督/ルキーノ・ヴィスコンティ
出演/バート・ランカスター
ヘルムート・バーガー
血栓症に倒れたヴィスコンティが2年ぶりに復帰した作品。バート・ランカスターやヘルムート・バーガーなど、気心の知れた俳優たちが出演しています。
ローマのアパルトマンに住む初老の教授(バート・ランカスター)。孤独だが平穏な生活を送っていた。そんなある日、中年のブルジョワ女性ビアンカ(シルヴァーナ・マンガーノ)が上の階を貸してほしいと言ってくる。一旦は断る教授だが、結局は貸すことになる。表向きは娘リエッタ(クラウディア・マルサーニ)と彼女の婚約者ステファーノ(ステファーノ・パトリーツィ)のための部屋ということだったが、本当は愛人コンラッド(ヘルムート・バーガー)を住まわせるためだった。最初は粗野な振る舞いのコンラッドを嫌った教授だったが、彼に教養があることがわかり、彼に好意を抱くようになる。そして、教授にとって彼らは家族のような存在になりつつあったのだが・・・というストーリー。
全編セット内での撮影だけれど、さすがはヴィスコンティ。細部までのこだわりが感じられます。重厚かつ豪華。部屋ひとつ見るだけで、教授がどんな人なのか感じられます。落ち着いた装飾、壁にかかる18世紀の家族の肖像画。孤独な老人は、家族を持たない代わりに、家族の肖像画を好んで収集した。そこに安らぎを見出すように。
本当に孤独が好きな人などいない。特に老いればなおさら。しかし、教授は妻に裏切られ、離婚した過去があり、もうこれ以上心に傷を負わないために、人間となるべく関わりを持たぬようになった・・・と思うのです。そんな彼の領域に、若い彼らはズカズカと上がり込んだ。でもそれは、教授にとっては必要なことだったのかもしれません。たとえ一時でも、若い彼らと食事をして教授は楽しそうだったし、コンラッドと知識を交えた会話をする時は、充実していたに違いないのです。彼らこそ、教授が求めていた”家族”だと思うから。
裕福な生まれではないコンラッドが、ビアンカのヒモにならざるを得なかった皮肉。知的な彼にとって、それは苦痛だったかもしれない。教授と話している時の彼は穏やかで、2人の間には特別な雰囲気が流れていた。そう。まるで本物の父と子のような・・・飾らない彼がそこにいた。
教授を演じたのは「山猫」のバート・ランカスター。私は若い時の彼よりも年を取ってからの方が断然好きです。特に、ヴィスコンティ作品でその重厚な魅力は如何なく発揮されてます。
そして、コンラッド役のヘルムート・バーガー。この頃の彼は本当に美しい。どんな女優よりも美しく撮られていて、ヴィスコンティの彼に対する愛を感じました。
あと、特別出演ながら印象を残す2人の女優。教授の回想シーンに出てくる母親役のドミニク・サンダと妻役のクラウディア・カルディナーレ。こんなチョイ役でもこれ程の女優たちが出演しているところに、ヴィスコンティ監督の凄さが垣間見えます。
人間の孤独とは何か、家族とは何かを深く考えさせてくれる傑作。この作品を観て思ったのだけれど、今、これほどまでの作品を撮れる監督がいるでしょうか。時代の流れを読み、人間の在り方を問い、世代間の違いを作品に刻みつけた。私たちは作品を観て、いろいろ考える。作品を観てこんなに様々なことを考えるのは、やはり、ヴィスコンティが描きたかったことを読み取りたいから。そうすることに価値のある作品・監督だと思うのです。こういう監督は本当にもう少なくなりました。映画ファンとして、それが残念でなりません。
ところで、この作品は英語だったのですが、イタリア語で観たかったですね。予告編はイタリア語だったのに・・・。やはりヴィスコンティはイタリア語で観たいものです。
(DVD)
by mayumi-68
| 2010-05-02 14:30
| カ行