2011年 04月 23日
「怒りの葡萄」 |
1940年/アメリカ
監督/ジョン・フォード
出演/ヘンリー・フォンダ
ジェーン・ダーウェル
西部劇ではないジョン・フォード監督作品。ジョン・フォードは西部劇がピカイチだとは思うけれど、それ以外の作品もうまい。「わが谷は緑なりき」や「静かなる男」「モガンボ」などはそのいい例。ちなみにこの「怒りの葡萄」でフォードは2度目のアカデミー監督賞を受賞している(1度目は「男の敵」、3度目は「わが谷は緑なりき」、4度目は「静かなる男」。西部劇で受賞してないのが驚き)。
1930年代半ば。殺人の罪で服役していたトム(ヘンリー・フォンダ)は仮釈放となり、故郷オクラホマの農場へと戻るが、一家は農場を追われ、新天地目指してカリフォルニアへと旅立つところだった。しかし、辿りついたカリフォルニアは無職の者達であふれ、低賃金で働かされているのだった・・・というストーリー。
原作はジョン・スタインベックのピュリッツァー賞受賞のベストセラー小説。原作ものなので、いつものジョン・フォード作品とは少々毛色が違う。厳しい労働者の現実が描かれており、暗い気持ちになる。ただ、フォードらしい人情味あふれるシーンも。私が好きなのは、カリフォルニアに行く途中で立ち寄ったスタンドのカフェの話。父親が15セントのパンを10セントで売ってもらう。文句を言っていたカフェのウエイトレスだが、幼い子供たちには5セントのキャンディーを1セントだと言って売ってあげる。それを見ていたトラックのドライバー達は「お釣りはいらない」と言ってお金を払っていく・・・。その温かさに観ていて「ああ、これがジョン・フォードだよなあ」と思う。どんな過酷な状況の中にも人情は生きている。それをフォードはこのささやかなエピソードで示してみせたのだ。
決して明るいラストとは言えないけれど、それでも希望が見えるのは、母親の逞しさだ。彼女の大らかさと強さ。男は人生を区切って見るけれど、女は流れで見る。流れが止まることはない。「永遠に生きていく。それが民衆なんだよ」とキッパリと言う彼女の言葉は力強かった。
(NHK-BSハイビジョン)
監督/ジョン・フォード
出演/ヘンリー・フォンダ
ジェーン・ダーウェル
西部劇ではないジョン・フォード監督作品。ジョン・フォードは西部劇がピカイチだとは思うけれど、それ以外の作品もうまい。「わが谷は緑なりき」や「静かなる男」「モガンボ」などはそのいい例。ちなみにこの「怒りの葡萄」でフォードは2度目のアカデミー監督賞を受賞している(1度目は「男の敵」、3度目は「わが谷は緑なりき」、4度目は「静かなる男」。西部劇で受賞してないのが驚き)。
1930年代半ば。殺人の罪で服役していたトム(ヘンリー・フォンダ)は仮釈放となり、故郷オクラホマの農場へと戻るが、一家は農場を追われ、新天地目指してカリフォルニアへと旅立つところだった。しかし、辿りついたカリフォルニアは無職の者達であふれ、低賃金で働かされているのだった・・・というストーリー。
原作はジョン・スタインベックのピュリッツァー賞受賞のベストセラー小説。原作ものなので、いつものジョン・フォード作品とは少々毛色が違う。厳しい労働者の現実が描かれており、暗い気持ちになる。ただ、フォードらしい人情味あふれるシーンも。私が好きなのは、カリフォルニアに行く途中で立ち寄ったスタンドのカフェの話。父親が15セントのパンを10セントで売ってもらう。文句を言っていたカフェのウエイトレスだが、幼い子供たちには5セントのキャンディーを1セントだと言って売ってあげる。それを見ていたトラックのドライバー達は「お釣りはいらない」と言ってお金を払っていく・・・。その温かさに観ていて「ああ、これがジョン・フォードだよなあ」と思う。どんな過酷な状況の中にも人情は生きている。それをフォードはこのささやかなエピソードで示してみせたのだ。
決して明るいラストとは言えないけれど、それでも希望が見えるのは、母親の逞しさだ。彼女の大らかさと強さ。男は人生を区切って見るけれど、女は流れで見る。流れが止まることはない。「永遠に生きていく。それが民衆なんだよ」とキッパリと言う彼女の言葉は力強かった。
(NHK-BSハイビジョン)
by mayumi-68
| 2011-04-23 14:30
| ア行