2006年 01月 27日
「ミュンヘン」 |
2005年/アメリカ
監督/スティーブン・スピルバーグ
出演/エリック・バナ
重いと思った。
1972年のミュンヘンオリンピックで起きた悲劇。オリンピック村のイスラエル選手11人が、パレスチナの武装集団「ブラックセプテンバー」によって殺害される。激怒したイスラエル政府はモサドの特殊部隊を使って報復に出る・・・というストーリー。
憎しみの連鎖。報復に次ぐ報復。でも、一方的にどちらが悪いなどと断ずることもできない。ユダヤ人にとって、虐げられ、ようやく手に入れた安住の地がイスラエルであり、パレスチナ人にとっては、今まで住んでいた土地をいきなり追い出されたという恨みがある。難しい問題なのだ。
暗殺集団の面々は、殺しのプロ、というわけではないのが意外だった。むしろ、素人に近い。そんな彼らが国のため、という名目のもと、一人一人相手を殺していくのだ。
映画のコピーでは、エリック・バナ演じる主人公が自分は正しいのかと苦悩するシーンとなっていたが、実際には、次に狙われるのは自分かと怯えている面が強調されていた。その怯えが国に対する疑念へと変わったのだろう。
ユダヤ人であるスピルバーグがこの作品を撮ったことで賛否両論あるだろう。その立場を利用しているという声もある。今は亡き淀川さんも「シンドラーのリスト」に対し、偽善的でイヤだとコメントしている。でも、日本人の私たちには、ユダヤ人である彼の気持ちなんて到底理解できないと思う。ユダヤ人というだけで蔑みの対象になってきた。自分のアイデンティティーと向き合っているスピルバーグに対し、私は無責任な発言はできない。
この作品、パレスチナとイスラエル、双方から批判されているらしい。そうだろうな、と思う。どちらかに肩入れしている作品ではないし。
ラスト、ニューヨークのツインタワーが背景に映るシーンがある。それを観て、世界の報復の図式は変わってないと思った。アフガニスタンに空爆したアメリカ。繰り返されるテロ行為。虚しいだけの報復の連鎖。でも、それがもし自分の身に起こったら?大切な人が殺されたら?自分は報復を望まず、憎しみの連鎖を断ち切れるだろうか。YESと言い切れない自分がいる。だからこそ、この作品を重いと感じたのだ。人の心に問いかける一作だと思う。
(試写会 一ツ橋ホール)
監督/スティーブン・スピルバーグ
出演/エリック・バナ
重いと思った。
1972年のミュンヘンオリンピックで起きた悲劇。オリンピック村のイスラエル選手11人が、パレスチナの武装集団「ブラックセプテンバー」によって殺害される。激怒したイスラエル政府はモサドの特殊部隊を使って報復に出る・・・というストーリー。
憎しみの連鎖。報復に次ぐ報復。でも、一方的にどちらが悪いなどと断ずることもできない。ユダヤ人にとって、虐げられ、ようやく手に入れた安住の地がイスラエルであり、パレスチナ人にとっては、今まで住んでいた土地をいきなり追い出されたという恨みがある。難しい問題なのだ。
暗殺集団の面々は、殺しのプロ、というわけではないのが意外だった。むしろ、素人に近い。そんな彼らが国のため、という名目のもと、一人一人相手を殺していくのだ。
映画のコピーでは、エリック・バナ演じる主人公が自分は正しいのかと苦悩するシーンとなっていたが、実際には、次に狙われるのは自分かと怯えている面が強調されていた。その怯えが国に対する疑念へと変わったのだろう。
ユダヤ人であるスピルバーグがこの作品を撮ったことで賛否両論あるだろう。その立場を利用しているという声もある。今は亡き淀川さんも「シンドラーのリスト」に対し、偽善的でイヤだとコメントしている。でも、日本人の私たちには、ユダヤ人である彼の気持ちなんて到底理解できないと思う。ユダヤ人というだけで蔑みの対象になってきた。自分のアイデンティティーと向き合っているスピルバーグに対し、私は無責任な発言はできない。
この作品、パレスチナとイスラエル、双方から批判されているらしい。そうだろうな、と思う。どちらかに肩入れしている作品ではないし。
ラスト、ニューヨークのツインタワーが背景に映るシーンがある。それを観て、世界の報復の図式は変わってないと思った。アフガニスタンに空爆したアメリカ。繰り返されるテロ行為。虚しいだけの報復の連鎖。でも、それがもし自分の身に起こったら?大切な人が殺されたら?自分は報復を望まず、憎しみの連鎖を断ち切れるだろうか。YESと言い切れない自分がいる。だからこそ、この作品を重いと感じたのだ。人の心に問いかける一作だと思う。
(試写会 一ツ橋ホール)
by mayumi-68
| 2006-01-27 18:30
| マ行