2008年 06月 15日
「三人の名付け親」 |
1948年/アメリカ
監督/ジョン・フォード
出演/ジョン・ウェイン
ペドロ・アルメンダリス
ハリー・ケリー・Jr
私は個人的に40歳代のジョン・ウェインが一番カッコイイと思っている。20歳代はまだ青いし、30歳代では貫禄が足りない。50~60歳代は体がちょっと重そう。理想的なのは40歳代。男として一番脂が乗っていて、俳優としても貫禄がついてきている。そして、この作品撮影時41歳の彼は最高にカッコイイ。
アリゾナのウェルカムという町にやってきた3人の無法者のボブ、ピート、キッド。三人は銀行強盗を起こし、逃げる途中でキッドが撃たれて負傷。しかも水袋を撃たれ、砂漠を行く彼らは強烈な喉の渇きと闘うことになる。ようやくたどりついた水場には1台の幌馬車が止まっており、中に一人の妊婦がいた。彼女は赤ん坊を生み、三人に託して死んでしまう・・・というストーリー。
実はこの「三人の名付け親」、これが5度目の映画化。これまでに有名なのはウィリアム・ワイラー版の「砂漠の生霊」。未見ですが、是非是非観てみたいですね。
この「三人の名付け親」の撮影時のエピソードについては、キッドを演じたハリー・ケリー・Jrが「ジョン・フォードの旗の下に」という著書の中でいろいろと語っていますが、相当過酷な撮影だったらしい。・・・観ればわかりますね。すさまじい砂嵐。主役の三人が見えなくなるほど。観ているこちらまでもが喉の渇きを覚えるほど。
あと、ハリー・ケリー・Jrはフォード作品に参加するのは初めてで、かなりフォードにしごかれたらしい。しごき、というよりはいびりに近かったらしいけれど。ジョン・フォードという人は名匠であるけれど、サディスティックな面もあって、俳優は皆酷い罵声を浴びたらしい。ハリー・ケリー・Jrはある意味標的で、彼はかなり怯えていたのだけれど、常にジョン・ウェインが面倒を見てくれたらしい。一度、酷い辱めをフォードから受けた時など、庇ってくれたんだとか。いい兄貴分だったんだなあ、と思う。
鬼のようなフォードだけれど、映画監督としては超一流。素晴らしいショットがいくつもあるのだけれど、私が特に好きなのは、死にゆくキッドの顔を陽射しから守るため、ボブが帽子で太陽を遮るシーン。このジョン・ウェインがすごくカッコイイんだな。この絵を撮ったフォードに感謝したいわ。
それにしても、この作品が持つ温かさは素晴らしい。三人は無法者だが、赤ん坊のことは母親との約束を守り抜く。三人のキャラクターもいい。リーダー格で男らしいボブ、陽気なメキシコ人ピート(スペイン語を喋るたびに、赤ん坊が覚えてしまうだろ!綺麗な英語で育てるんだ!とボブに怒られるところが楽しい)、一番若く純粋なキッド。この三人の男たちが赤ん坊を慈しむ様子がいいのだ。キッドは怪我がもとで死に、脚を骨折したピートは足手まといにならないよう拳銃で自殺する。一人残ったボブは赤ん坊を抱え、意識朦朧としながら歩く。ラストは宗教的だが、説教臭いわけでもないのだ。ただ、ボブ一人が幸せになるラストはそれまでの4作とは違うらしいけど。そこだけが確かに微妙ではある。死んだ二人の悲惨さを考えるとね・・・。でもハッピーエンド好きな私としては、あの終わり方はホッとしたんだけどね。
ちなみにこの作品は冒頭、このようなクレジットがあらわれる。
”西部の暁の空に輝ける明星 ハリー・ケリーの思い出に捧ぐ”
キッドを演じたハリー・ケリー・Jrの父、ハリー・ケリーは前年に亡くなっている。そして、このハリー・ケリーこそ、以前フォードが同じ題材で撮った時、ジョン・ウェインのボブを演じた人だったのだ。ハリー・ケリーはフォードの親友でもあった。
そんな想いでこの作品を観ると、画面の隅々まで愛情が行き渡っているのがよくわかる。素晴らしい作品でした。
(DVD)
監督/ジョン・フォード
出演/ジョン・ウェイン
ペドロ・アルメンダリス
ハリー・ケリー・Jr
私は個人的に40歳代のジョン・ウェインが一番カッコイイと思っている。20歳代はまだ青いし、30歳代では貫禄が足りない。50~60歳代は体がちょっと重そう。理想的なのは40歳代。男として一番脂が乗っていて、俳優としても貫禄がついてきている。そして、この作品撮影時41歳の彼は最高にカッコイイ。
アリゾナのウェルカムという町にやってきた3人の無法者のボブ、ピート、キッド。三人は銀行強盗を起こし、逃げる途中でキッドが撃たれて負傷。しかも水袋を撃たれ、砂漠を行く彼らは強烈な喉の渇きと闘うことになる。ようやくたどりついた水場には1台の幌馬車が止まっており、中に一人の妊婦がいた。彼女は赤ん坊を生み、三人に託して死んでしまう・・・というストーリー。
実はこの「三人の名付け親」、これが5度目の映画化。これまでに有名なのはウィリアム・ワイラー版の「砂漠の生霊」。未見ですが、是非是非観てみたいですね。
この「三人の名付け親」の撮影時のエピソードについては、キッドを演じたハリー・ケリー・Jrが「ジョン・フォードの旗の下に」という著書の中でいろいろと語っていますが、相当過酷な撮影だったらしい。・・・観ればわかりますね。すさまじい砂嵐。主役の三人が見えなくなるほど。観ているこちらまでもが喉の渇きを覚えるほど。
あと、ハリー・ケリー・Jrはフォード作品に参加するのは初めてで、かなりフォードにしごかれたらしい。しごき、というよりはいびりに近かったらしいけれど。ジョン・フォードという人は名匠であるけれど、サディスティックな面もあって、俳優は皆酷い罵声を浴びたらしい。ハリー・ケリー・Jrはある意味標的で、彼はかなり怯えていたのだけれど、常にジョン・ウェインが面倒を見てくれたらしい。一度、酷い辱めをフォードから受けた時など、庇ってくれたんだとか。いい兄貴分だったんだなあ、と思う。
鬼のようなフォードだけれど、映画監督としては超一流。素晴らしいショットがいくつもあるのだけれど、私が特に好きなのは、死にゆくキッドの顔を陽射しから守るため、ボブが帽子で太陽を遮るシーン。このジョン・ウェインがすごくカッコイイんだな。この絵を撮ったフォードに感謝したいわ。
それにしても、この作品が持つ温かさは素晴らしい。三人は無法者だが、赤ん坊のことは母親との約束を守り抜く。三人のキャラクターもいい。リーダー格で男らしいボブ、陽気なメキシコ人ピート(スペイン語を喋るたびに、赤ん坊が覚えてしまうだろ!綺麗な英語で育てるんだ!とボブに怒られるところが楽しい)、一番若く純粋なキッド。この三人の男たちが赤ん坊を慈しむ様子がいいのだ。キッドは怪我がもとで死に、脚を骨折したピートは足手まといにならないよう拳銃で自殺する。一人残ったボブは赤ん坊を抱え、意識朦朧としながら歩く。ラストは宗教的だが、説教臭いわけでもないのだ。ただ、ボブ一人が幸せになるラストはそれまでの4作とは違うらしいけど。そこだけが確かに微妙ではある。死んだ二人の悲惨さを考えるとね・・・。でもハッピーエンド好きな私としては、あの終わり方はホッとしたんだけどね。
ちなみにこの作品は冒頭、このようなクレジットがあらわれる。
”西部の暁の空に輝ける明星 ハリー・ケリーの思い出に捧ぐ”
キッドを演じたハリー・ケリー・Jrの父、ハリー・ケリーは前年に亡くなっている。そして、このハリー・ケリーこそ、以前フォードが同じ題材で撮った時、ジョン・ウェインのボブを演じた人だったのだ。ハリー・ケリーはフォードの親友でもあった。
そんな想いでこの作品を観ると、画面の隅々まで愛情が行き渡っているのがよくわかる。素晴らしい作品でした。
(DVD)
by mayumi-68
| 2008-06-15 14:50
| サ行