2012年 04月 17日
「アーティスト」 |
2011年/フランス
監督/ミシェル・アザナヴィシウス
出演/ジャン・デュジャルダン
ベレニス・ベジョ
アカデミー賞受賞を抜きにしても、ず~っと楽しみにしていた作品。予告編を観た時からワクワクしてました。これは私の好きな分野だ!と。
1927年のハリウッドを舞台に、大スターの俳優と駆け出しの若手女優との恋や、サイレントからトーキーへの移り変わりを描いた作品。
モノクロでサイレント。この形式の映画を観たことがある若い人ってあまりいないんじゃないでしょうか。古い映画好きの私でも、サイレント映画となると「メトロポリス」「戦艦ポチョムキン」「カビリア」「アイアン・ホース」「巴里の女性」「ウィンダミア夫人の扇」「結婚哲学」「つばさ」「第七天国」「街の灯」の10本しかないものねえ・・・。
主演のジャン・デュジャルダンは昔の大スターの雰囲気が出ていてとても良かったです。タップダンスを踊る姿はジーン・ケリーを思い起こさせました。ジーン・ケリーといえば、「雨に唄えば」もサイレントからトーキーへ移行した話。こちらはドタバタの喜劇ですが、「雨に唄えば」を観ておけば、今作をもっと楽しめると思います。
サイレントからトーキーへの波に乗れなかった俳優で代表的なのはジョン・ギルバート。渋い美形俳優だったのですが、声がその外見にそぐわない甲高いものだったので、人気が急落。30代でアルコール中毒で亡くなってしまいます。この作品はそんなジョン・ギルバートを彷彿とさせますね。
主人公の相手役を演じたのはベレニス・ベジョ。彼女がねえ・・・ちょっとイメージと違う。あの頃のハリウッド女優はもうちょっと肉感的です。クララ・ボウとかジーン・ハーロウとか。ベレニス・ベジョは痩せすぎで、ちょっと品がないかな、と。
あと注目はパルムドッグ賞を獲得したジャック・ラッセル・テリアのアギー!可愛いなあ。自殺しようとする主人公を必死に止めようとするアギーの演技は、犬好きにとっては涙モノでした。
予想できる展開ながら素直に良かったと思えるのは、作り手の過去の映画へのオマージュが感じられるから。「スター誕生」「第七天国」「雨に唄えば」等々、観ながらニコニコしっぱなしでした。淀川さんや双葉先生が観たら、どんな評をお書きになるだろう、とも思いました。双葉先生が以前仰られていたこと。「サイレントやモノクロ映画が今の映画に劣るわけではない。その技術を持っていなかっただけだ」と。まさしくそう思います。そして今回、「アーティスト」を観てその思いを強くしました。今の映画って何でもかんでも説明しすぎるんです。でもサイレントは違う。観客のイマジネーション力も重要。俳優達の表情から感情を読み取るのです。素晴らしいことですよね。考えてみたら、私が観たサイレント映画10本。すべて傑作でした。「メトロポリス」で驚嘆し、「第七天国」で号泣しました。今の映画では滅多に泣きません。心に響く作品が少ないんです。今の監督は技術に頼りすぎているような気がしますね。「何を伝えたいか、何を表現したいか」が足りない気がします。
ところで今作って第一回アカデミー受賞作の「つばさ」以来のサイレント映画なんですってね。そういうの、何だか嬉しくなります。
クラシック映画をこよなく愛する者にとっては最高の映画でした。監督の映画に対する”愛”が感じられました。フランスの監督がこういう作品を撮ったというのも、何だか心憎い感じがします。やはり、あの頃のハリウッド映画はキラキラとした黄金時代だったんだなあ、と。クラシック映画、万歳!
(TOHOシネマズららぽーと横浜)
監督/ミシェル・アザナヴィシウス
出演/ジャン・デュジャルダン
ベレニス・ベジョ
アカデミー賞受賞を抜きにしても、ず~っと楽しみにしていた作品。予告編を観た時からワクワクしてました。これは私の好きな分野だ!と。
1927年のハリウッドを舞台に、大スターの俳優と駆け出しの若手女優との恋や、サイレントからトーキーへの移り変わりを描いた作品。
モノクロでサイレント。この形式の映画を観たことがある若い人ってあまりいないんじゃないでしょうか。古い映画好きの私でも、サイレント映画となると「メトロポリス」「戦艦ポチョムキン」「カビリア」「アイアン・ホース」「巴里の女性」「ウィンダミア夫人の扇」「結婚哲学」「つばさ」「第七天国」「街の灯」の10本しかないものねえ・・・。
主演のジャン・デュジャルダンは昔の大スターの雰囲気が出ていてとても良かったです。タップダンスを踊る姿はジーン・ケリーを思い起こさせました。ジーン・ケリーといえば、「雨に唄えば」もサイレントからトーキーへ移行した話。こちらはドタバタの喜劇ですが、「雨に唄えば」を観ておけば、今作をもっと楽しめると思います。
サイレントからトーキーへの波に乗れなかった俳優で代表的なのはジョン・ギルバート。渋い美形俳優だったのですが、声がその外見にそぐわない甲高いものだったので、人気が急落。30代でアルコール中毒で亡くなってしまいます。この作品はそんなジョン・ギルバートを彷彿とさせますね。
主人公の相手役を演じたのはベレニス・ベジョ。彼女がねえ・・・ちょっとイメージと違う。あの頃のハリウッド女優はもうちょっと肉感的です。クララ・ボウとかジーン・ハーロウとか。ベレニス・ベジョは痩せすぎで、ちょっと品がないかな、と。
あと注目はパルムドッグ賞を獲得したジャック・ラッセル・テリアのアギー!可愛いなあ。自殺しようとする主人公を必死に止めようとするアギーの演技は、犬好きにとっては涙モノでした。
予想できる展開ながら素直に良かったと思えるのは、作り手の過去の映画へのオマージュが感じられるから。「スター誕生」「第七天国」「雨に唄えば」等々、観ながらニコニコしっぱなしでした。淀川さんや双葉先生が観たら、どんな評をお書きになるだろう、とも思いました。双葉先生が以前仰られていたこと。「サイレントやモノクロ映画が今の映画に劣るわけではない。その技術を持っていなかっただけだ」と。まさしくそう思います。そして今回、「アーティスト」を観てその思いを強くしました。今の映画って何でもかんでも説明しすぎるんです。でもサイレントは違う。観客のイマジネーション力も重要。俳優達の表情から感情を読み取るのです。素晴らしいことですよね。考えてみたら、私が観たサイレント映画10本。すべて傑作でした。「メトロポリス」で驚嘆し、「第七天国」で号泣しました。今の映画では滅多に泣きません。心に響く作品が少ないんです。今の監督は技術に頼りすぎているような気がしますね。「何を伝えたいか、何を表現したいか」が足りない気がします。
ところで今作って第一回アカデミー受賞作の「つばさ」以来のサイレント映画なんですってね。そういうの、何だか嬉しくなります。
クラシック映画をこよなく愛する者にとっては最高の映画でした。監督の映画に対する”愛”が感じられました。フランスの監督がこういう作品を撮ったというのも、何だか心憎い感じがします。やはり、あの頃のハリウッド映画はキラキラとした黄金時代だったんだなあ、と。クラシック映画、万歳!
(TOHOシネマズららぽーと横浜)
by mayumi-68
| 2012-04-17 19:00
| ア行